社員旅行の幹事

社員旅行の幹事をやることになったのはかれこれ5年ほど前のことだった。
　


幹事など簡単な飲み会の幹事役を経験したぐらいで、社員旅行という大きな規模のものは初めてだ。課題となるのはもちろん、限られた経費の中でどれだけ、どのように社員に満足してもらうか。
私は2つの選択肢にぶち当たった。それは宿泊をするかしないかというもの。
日帰り旅行にすれば大幅に経費を下げられるのは間違いない。しかし、満足度は下がるかもしれない。もしくは、宿泊しても経費を下げられる方法はないだろうか。
そのとき会社は、毎年利益が下がり、社長の顔つきも厳しい状況であった。
私の答えはひとつしかなかった。
そう「日帰り」での社員旅行だ。
そうと決まればどのように満足度を高めるかである。経費を抑えているからといって、社員に決してひもじい思いはしてほしくはない。文字通り、気持ちもお腹も満腹になってもらうか。
それは当時の新入社員であった私のプライドでもあった。
気持ちを満足してもらうにはどうすればよいか。そしてお腹も。
「やはり、思い出に残るものにしなくては！」
私は様々な旅行サイトを調べた。旅行会社担当者とも相談しながら、なんとか形づくることができた。
ポイントは体験型だ。
昼食は牧場で自分たちでソーセージ作りを体験してもらう。そして食べる。それを肴に飲む。
ソーセージ作りは本格的なものをチョイスし、味も間違いないはずだ。
その後、ビール工場に行き工場見学を行い、見学だけでなくおいしいビールの注ぎ方を体験してもらう。そして飲む。
ビール工場で生産したばかりのビールはまた格別であろう。
夜だけはお金をかけて一流のホテルでパーティ。もちろん、飲む。しっかりとしたコース料理でさらに追い討ちをかける。
これだけしっかりとしたパーティは日帰りだからこそできるもの。

社員旅行後日に行ったアンケートでは意外な回答が多かった。
「飲みすぎてこれ以上飲めない。最後のホテルであんまり食べられなかった。」
ちょっとやりすぎた感があるが、狙い通りである。
中途半端な社員旅行にはしたくないという思い。新入社員だからこそできたのかもしれないが、極端な社員旅行の例であることは間違いない。

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